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実は使われていない製薬コンテンツ 活用推進の鍵とは?

医師の情報ニーズの個別化、コミュニケーションチャネルの多様化に対応すべく、製薬会社が制作するデジタルコンテンツの量は引き続き増加傾向にあります。しかしながら、多大な労力とコストをかけて制作されたコンテンツは、十分に活用されていないのが現状です。

Veevaの調査(2022年)によると、日本において、タブレット等に格納されているデジタルコンテンツの8割は過去1年にほとんど使われておらず、医師との面談において、デジタルコンテンツが活用されている割合は2割程度、また多くのデジタルコンテンツでは数十枚のスライドが含まれていますが1回の面談における使用スライド枚数は4枚程度です。
もちろん、すべての面談でコンテンツをフルに使うということはありませんが、だとしてもコンテンツが理想的に活用されているとは言い難い状況です。実際、デジタルコンテンツの活用について頭を悩ませているという声は多くの製薬会社の方からよく聞きます。今回は、弊社の経験に基づき、デジタルコンテンツの活用を推進するためのアプローチをご紹介します。

*)主にCLMやiVA等と呼ばれるタブレットやPCで提示するプレゼンテーション資材


まず、コンテンツが活用されていない理由は多岐にわたります。コンテンツが使いづらい、プロセスが伝わっていない、スキルが不足していてうまく使えない、活用する必要性を感じていないなど、多くの場合、複数の要因が絡み合っています(図1)。活用推進のアクションをとる前に、定量、定性データを含めて多面的に分析し、活用を阻害している要因を把握することが重要です。例えば、CRMに蓄積されているデータによりコンテンツの活用度合いのばらつきを分析することで、活用を阻害する要因が見えてきたり、現場のマネージャー、MRに実態をヒアリングすることで、マネージャーの考え方により活用度に大きな違いがあった等、本社からは見えていなかった意外な問題点が見えてきたりすることがあります。

図1:コンテンツが十分に使われない理由は多岐にわたる
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コンテンツが使われていない要因を分析した結果、使いたいコンテンツがタイムリーに提供されていないということがしばしば見受けられます。以前にコンテンツ制作プロセスの回でもお伝えしたように、本来デジタルコンテンツはスピーディーに配信することが可能です。しかし複雑な手続きなどが原因で配信が遅れキャンペーンの開始時期にデジタルコンテンツの提供が間に合わないと、使う時期を逃してしまうことになります。そのような場合には、コンテンツ制作のプロセス・体制を見直す必要があります。

また、要因分析の結果、コンテンツの質を高める必要があると考える場合は、まずコンテンツが医師および現場のニーズに合っているのか見直すことをおすすめします。たとえば、紙資材と同じ内容が何十ページものスライド集としてまとめられたものしか提供されていないと、コンテンツを見る医師も使うMRもデジタルである意味をあまり感じられないかもしれません。デジタルであることを活かし、いかに医師のニーズに合わせて、効率的にプロモーションができるような仕組みを構築するかが、デジタルコンテンツ活用推進の第一歩だと考えます。

たとえば、スライド上の質問への回答に基づき、表示スライドが変わるようなインタラクティブなコンテンツを活用することで、治療方針に関するディスカッションが促され、医師の考え方の理解を深めることにつなげられます。また、CRMに記録されている医師のプロファイル、処方の実態、アダプションラダーのステージなどの情報に基づき、使うべきコンテンツが推奨されるような仕組みを使っている例もあります。会社のガイドラインによりますが、カスタムプレゼンテーションが使える場合は、MRが顧客のニーズに合わせてストーリーを組み替えるのも、コンテンツの質を高めるための1つのアプローチです。

コンテンツの活用プロセスにおいては、活用状況・結果のフィードバックループを回せるかどうかが鍵となります。デジタルコンテンツを活用し、その結果を記録していても、紙資材を使っている場合と比べて、MRが何かメリットを感じられなければ続きません。簡単な内容でよいので、コンテンツ活用結果を現場にフィードバックすることが重要です。よく使われているコンテンツのランキングや、成績上位のMRがよく使っているコンテンツのリストなどを示すことでも、デジタルコンテンツ活用のモチベーションを高めることができます。もう少し進んで、コンテンツの活用履歴および実績を分析し、機械学習などを用いたコンテンツの推奨に取り組む企業も多くあります。ただ、現場が納得して活用できるレベルにまで成熟している例はまだほとんどない印象です。また、各MRが個々の医師に対してどのコンテンツを使い、どのような反応だったのかを効率的に振り返れるような仕組みを作ることも重要です。

また、デジタルコンテンツには、医師からの反応を記録する機能がありますが、MRの主観なので使わない、信用できないという声をよく聞きます。確かに評価自体は主観ではありますが、集積することでコンテンツ間の反応の差は見えてくるので、キーとなるコンテンツの反応を知りたい場合は活用する価値はあるかと思います。また、コンテンツに対する医師の反応について、より客観的な指標を開発すべく、医師からの問い合わせやWeb講演会の参加など、プル型のチャネルへの影響を指標として組み入れる組み入れている事例もあります。
一方、コンテンツの活用推進を焦るあまり、活用状況をKPIとしてトラックするのは避けるべきです。そのようなトラッキングをすると虚偽の入力によりデータが歪んでしまい、そのデータに基づくフィードバックを誰も信じなくなってしまいます。

コンテンツが使われない背景として、ユーザーのスキルやマインドに問題があることもよくあります。スキルについては、紙資材を用いている場合と同様、ロールプレイなどの繰り返しの練習は必要です。さらに、デジタルコンテンツにおいては、正しい操作方法を理解しているかどうかで、業務の効率が大きく変わってきます。たとえば、面談中に医師から質問を受けた際にコンテンツを効率的に検索する手順を理解していれば、その場で対応することができます。また、デジタルコンテンツを使う際、あらかじめ入力した訪問予定から立ち上げると、その後のコールノートの入力が楽にかつ確実に行えるなど、ツール活用の様々なTipsを定期的に共有することは重要です。

また、マインドの面では、なぜデジタルコンテンツを活用する必要があるのか、トップが継続的にメッセージを発信することが大切です(図2)。これまで慣れ親しんできたやり方を変える場合、どうしても抵抗感があるかと思います。活用が進んでいる企業では、デジタルコンテンツを活用することで、医師にとって自分たちにとってどのような世界を実現したいのか、トップや本社の推進リーダーが継続的に現場に赴き、語りかけています。いつの間にか活用することが目的になってしまっていることがよくあります。デジタルコンテンツ活用の推進をされる際には、今一度、その目的を整理して、ステークホルダー間で目線を合わせられることをおすすめします。

図2:デジタルコンテンツの活用に取り組む主な理由
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ここまで述べてきたように、デジタルコンテンツの活用推進は容易ではありません。本社と現場のマネージャーがタッグを組み、少しずつ成功体験を積み重ねながら、デジタルコンテンツ活用の文化を育んでいくことが重要であると考えます。

次回は、デジタルアセット管理についてお伝えします。


このページでは、課題解決のヒントとなるトピックを、連載形式でお届けしています。

  1. Overview、個別化するコンテンツニーズにどう対応?
  2. コンテンツマッピング
  3. 制作プロセス改善
  4. レビュープロセス改善
  5. コンテンツ活用推進
  6. デジタルアセット管理(DAM)
  7. モジュラーコンテンツ

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