Veeva Japan Blog

eCTD 4.0 へのシームレスな移行に向けた、業界リーダーの洞察

※本ブログは、医薬品の承認申請を世界的に標準化する、eCTD 4.0 イニシアチブについて、2025 年 11 月 20 日実施の「Veeva Japan RIM User Group Meeting」における参加企業各社との議論内容をもとにまとめています。

eCTD 3.2 から 4.0 への移行は、ICH が推進する規制情報の国際標準化における中心的テーマであり、グローバルな Submission 業務を担う Regulatory Affairs (RA) teams にとっても、最重要関心事項の一つとなっています。2024年7月24日に公開したVeeva Blog では「Universal global deadlines for using eCTD 4.0 are a few years away(世界的な強制期限はまだ数年先)」と記しましたが、日本では世界に先駆けて 2026 年 4 月から Mandatory period(義務化期間) に入ります。そのため、すでに eCTD 4.0 で申請を提出済みの企業も存在し、また多くの企業が eCTD 4.0 対応のシステムや運用体制を検討・実装を進めています。

Veeva もすでに日本向けの eCTD 4.0 サポートをリリース済みであり、2025 年 11 月 20 日に開催された Japan RIM User Group Meeting では、参加企業各社がどのように社内の eCTD 4.0 イニシアチブを進めているのかの知見が共有されました。この会には 27 社の製薬企業が参加し、そのうち約半数はグローバルファーマの日本法人(Japan Affiliate)でした。 ここでの議論は、主に以下の 3 つのトピックに焦点が当たりました。

  • eCTD 4.0 への準備と教育
  • とくに XML 構造に関する概念の変化
  • eCTD 4.0 時代の RIM システムへの期待

これらの分野に対する参加企業各社の取り組みを以下にご紹介します。

各参加企業内での eCTD 4.0 イニシアチブの推進

参加企業内での教育については、日本の eCTD Industry Working Group が作成した研修資料が広く活用されていることが分かりました。多くのグローバルファーマ日本法人も同ワーキンググループに参加しているため、基本的なナレッジに大きなギャップは見られません。また、今回の RIM User Group Meeting に参加した企業のうち、約三分の一は、日本のRAチームがグローバルレベルの eCTD 4.0 イニシアチブにおいても、社内のナレッジトランスファーになんらかの形での関与を予定していることが明らかになりました。これは、各社の本社所在地(日本/EU/US)によらない共通の傾向であり、多くの企業が、日本の次の市場として主に US を意識していることがわかりました。しかし、一部の企業では、現在 EMA が 2027 年に予定している CAPs の Mandatory periodを 強く意識しており、より具体的な社内での知識移転依頼に発展しているケースも見られました。一方で、いくつかの参加企業では、CRO などの eCTD 4.0 アウトソーシングサービスを利用することで、日本の eCTD 4.0 移行過渡期の対応を行う方針を持っているケースも観察されました。

eCTD 4.0 でのコンセプト変更への対応

eCTD 3.2 から 4.0 への移行では多くの変更がありますが、今回のディスカッションでは、とくに XML 構造の変化について焦点が当てられました。eCTD 3.2  で使用されていたリーフ要素の概念は、eCTD 4.0 では文書とそのメタデータである Context of Use (CoU) を分離して管理するためのデータモデルに置き換えられました。 このような変化により、eCTD 4.0のSubmission Unit XML は、人間による可読性が低下しています。eCTD 4.0 の多くの機能については、RIM ベンダー各社が Publishing、あるいは Archive システムによって実装するべきであるという共通認識がありましたが、この XML のコンセプト変更は製薬企業側の業務設計やチェック体制に影響を与える可能性があるという議論もありました。具体的には、PMDA が 2025 年 11 月現在 eCTD 4.0 向けに使用している 350 個超のバリデーションチェック項目と、non-human readable XML という状況を踏まえると、従来 eCTD 3.2 で人間が確認していたドシエの品質チェックを、今後は部分的にバリデーションが担うことになるのではないかという指摘がありました。現時点での実務上は、eCTD 3.2 時代の human readable XML 品質チェック運用の慣性が明確に存在している一方で、eCTD 4.0 での non-human readable XML が持つすべての情報をアーカイブビューワに表示することは人間にとってわかりづらくなるのではないかという懸念の声もあがりました。これは、eCTD 4.0 時代のアーカイブビューワでは、non-human readable XML から適切な情報を取捨選択してhuman readable に提示する必要性を示唆しています。

eCTD 4.0時代のRIMシステムへの期待

前述の示唆を踏まえると、XML を直接読まなくともメタデータを確認できるアーカイブビューワを持つ RIM システムには、non-human readable XML をhuman readable に翻訳するという、これまでよりも大きな役割が期待されます。さらに、non-human readable XML をベースにこれまで以上に多くのバリデーション結果が出力されることになるため、Submission の作成フェーズから Publisher がバリデーション結果を即座に確認できることは重要な実務上の要件になると推定できます。eCTD 4.0 の実装を直接的に経験、あるいは現在準備中である Japan RIM User Group Meeting の参加各社からは、将来的にバリデーション結果の自動修正提案機能を持つ RIM システムへの期待の声が寄せられました。

eCTD 4.0へのシームレスな移行

先に示した通り、日本以外の国の eCTD 4.0 の Mandatory period はまだ先であり、また、現時点で PMDA 以外の HA では、eCTD 4.0 になっても大幅なバリデーションチェック項目の増加は見られません。そのため、今回の「non-human readable XML」から「機械可読性(Machine readable XML)」へ、そして「網羅的なバリデーション」から「システムによる修正提案(System suggest correction)」へ、という将来像が世界的に妥当な期待かどうかを評価するためには、数年の期間が必要と予想されます。なお、Veeva RIM はすでに日本の eCTD 4.0 サポートをリリースしており、次の地域として US へのサポート拡大を予定しています。顧客が eCTD 4.0 へのシームレスな移行ができるように継続的に支援し、理論から実践へ、そして実践から成熟へというプロセスを通じて、eCTD 4.0 時代のインダストリーの成熟を促進していきます。eCTD 4.0 の具体的な設定にご関心がある方は、Veeva の Account Partner もしくは Managed Services 担当者までお問合せください。また、Veeva Connect では世界各国の eCTD 4.0 移行のタイムラインについても継続的に発信していますので、ぜひコミュニティにご参加ください。

※本内容は、US の Veeva ブログページおよび EU ブログページでも英語で公開しています。