Veeva Japan Blog

製薬企業における品質管理の役割の革新とデジタルトランスフォーメーション

品質管理の役割は時代とともに大きく変化しています。特に近年ではビジネスの複雑化や新たな治療法の増加により、従来のリアクティブな品質保証(問題が発生した際に対応)から、プロアクティブなアプローチ(問題が発生しないように予防措置を講じる)が求められるようになり、品質管理は製薬会社にとってビジネスの戦略的パートナーとなりつつあります。

また新薬開発コストの高騰や競争の激化などを背景にビジネスモデルの変革が余儀なくされています。さらに日本では少子高齢化の進行や医療費の抑制、薬価の引き下げや人手不足など、ビジネス環境は激しく変化しており、それに応じた対応が世界の中でも特に重要です。

では、各製薬会社はどのようにしてリアクティブからプロアクティブな品質管理に転換し、新しい時代に合ったビジネス変革を実現できるのでしょうか。

プロアクティブ品質管理

QMS(品質管理システム)の成熟度は大きく5つの段階に分けられます(図1参照)。段階1・2ではプロセスを手動、紙ベース、一部電子システム上で管理・保管している状態です。この段階では主に品質イベントや製造の記録などが文書またはデータとして様々な場所に保存されているだけで、リアクティブな品質保証と言えます。

段階3では主要なQMSプロセスは電子システムで管理されていて、あらゆるデータも集計されていますが、部署や担当の業務プロセス、製造所によって別々のプロセスや電子システムを扱っており、組織全体での状況が分かりづらく、全体像を得るのにデータの統合や処理が必要で多大な労力を要します。

段階4に進むと、エンドツーエンドの品質管理プロセスが一つのプラットフォーム上で管理されるため、システムインテグレーションやそのメンテナンス、Excelなどを用いたマニュアルのデータ統合なしで品質状況を把握でき、データドリブンな決定や対応が迅速にできる環境です。段階5ではこのデータをさらに駆使し、予測分析による品質イベントの予防措置や早期発見、根本原因の早期特定と対策、また自動化も活用し、さらなる品質の向上と製造スピードの向上につながります。このように、リアクティブからプロアクティブへの変遷には、中期~長期的な未来図の作成・共有と、それに沿った段階的なデジタル戦略が必要です。

図1:バイオ医薬品業界のデジタル成熟度
バイオ医薬品の望ましい状態の中核にあるデジタルトランスフォーメーション
fig1

ビジネス変革とデジタルトランスフォーメーション

ビジネス変革においても、業務の効率化やデータの可視化・データ活用、組織のアジリティ向上など製薬業界でも様々な取り組みがされていますが、いずれにおいても将来のビジョンを共有し、中期~長期的なデジタルトランスフォーメーションの計画が不可欠です。

例えば業務の効率化には、不要な業務の排除やプロセスの最適化もありますが、ルーティン業務の自動化はどの製薬会社でも取り組んでいることでしょう。クオリティ業務の自動化を実現するには一貫したデータモデルやプロセスが必要であり、各部署やユーザーの要件を満たすことだけを優先したポイントソリューションの導入が多々あるとシステムインテグレーションの構築や外部ミドルウェアの使用、そのメンテナンスなどにリソースやコストを費やす必要があります。プラットフォーム戦略を持ち、可能な限り統合ソリューションを使用すれば、核であるQMSシステムの最適化と業務の質や効率の向上に繋がる先進的な機能を取り入れることに注力することができます。

データの可視化では、紙や手動ベースで埋もれていたデータも、データ集計・分析を念頭に置いた電子システムの使用により、繰り返し使用できるレポートやダッシュボードの作成が可能になり、いつでも状況把握ができるようになります。データの可視化は目的ではなく、その内容から最適なアクションを決定し、フォーカスすべきところに人員や時間を割くためのツールです。

デジタル化、特にクラウド化への動きが欧米に比べゆっくりであった日本でも近年品質問題の多発によりクラウド化の動きが加速してきました。ただしデジタル化やクラウド化が時代の流れなので導入している、または検討している場合も少なからずあるのではないでしょうか。デジタルトランスフォーメーションはデジタル技術を活用し、ビジネスモデルを変革するのが目的です。新しいデジタル技術を導入することが目的になってしまうと多大な労力とコスト、またオペレーションの大きな変更など一時的な業務の増加につながるほどの代価と費用をかけて既存のプロセスを新しいシステムに移しただけになってしまってはビジネス変革のチャンスを逃してしまっているのではないでしょうか。

ですが、特に製造に携わるシステムユーザーは製造オペレーションを継続するのが最優先であり、新しいプロセスやテクノロジーの導入は負担になってしまうのも事実です。デジタルトランスフォーメーションプロジェクトの成功にはチェンジマネジメントが鍵といっても過言ではありません。長期的なロードマッププランニング、戦略的なプロセスの標準化やデータの一元化、総合的なeQMSのプラットフォームの選定、そしてそのビジョンを共有したクロスファンクショナルチームとそのチームを率いるリーダーがいないことには始まりません。

図2:デジタルディスラプションをもたらす製薬業界での動向
fig2

このようなビジネスモデル、クオリティの変革に取り組んだ成功例については、Elevating Quality Beyond Compliance: The Many Faces of Quality Transformation(英語)の記事をご覧ください。

Veevaの品質管理ソリューションは、国内外の製薬企業様で広く活用されています。品質管理プロセスの効果的なデジタル化や最適化についてお悩みの方はVeevaまでお気軽にご相談ください。